目次
  1. 1. 何が決まったのか
  2. 2. 新しい制度の中身
  3. 3. 対象と時期
  4. 4. 国のロードマップ
  5. 5. 立場別に、今からやること
  6. 6. 制度が始まる前に、補助金で経験を積む
  7. 7. まとめ

「LCCO₂の算定が義務化される」と聞いて、何がいつから求められるのかを確かめたい方は多いと思います。2026年7月31日に改正建築物省エネ法が公布され、建築物のライフサイクルカーボン(LCCO₂)を評価する制度ができました。

ただし、すべての建物で算定が義務になるわけではありません。この記事では、何が義務で、何が努力義務かを切り分け、対象・時期・今からやることを整理します。

要点

  • 義務になるのは「届出」:政令で定める大規模な建物(国の例では5,000㎡以上の事務所)は、建築主が着工の14日前までに評価結果を国に届け出る
  • 評価そのものは努力義務:建築主は評価に努め、設計を委託された建築士は建築主への説明などで協力する
  • 施行は公布から2年以内:国は2028年からの第2ステップで評価の一般化を進め、制度開始後おおむね5年以内に届出の対象を広げる想定

1. 何が決まったのか

改正の正式名称は「建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律の一部を改正する法律」です。改正後、法律の名前は**「建築物のエネルギー消費性能の向上及び脱炭素化の促進に関する法律」**に変わります。

これまでの建築物省エネ法は、建物を使うときのエネルギー(省エネ性能)を対象にしてきました。今回の改正で、**資材の製造から解体までの排出(ライフサイクルカーボン)**も、法律の対象に入りました。

2. 新しい制度の中身

仕組み誰が中身性格
評価の実施建築主ライフサイクルカーボンの評価に努める努力義務
国への届出建築主政令で定める用途・規模の建物は、着工の14日前までに評価結果を届け出る義務
建築主への説明設計を委託された建築士評価に必要な事項を説明するなど、必要な協力を行う協力
評価の指針国統一の算定ルール(建築物ライフサイクルカーボン評価の指針)を定める−
第三者認証・表示建築主など(任意)評価結果と省エネ性能について登録機関の認証を受け、標章を表示できる任意
建材・設備の表示メーカー(任意)国のルールで算定した資材製造段階の排出量を、カタログなどに表示できる任意

「義務化」の正確な意味

よく「LCCO₂算定の義務化」と言われますが、正確には次のとおりです。

  • 算定(評価)そのもの:すべての建築主にとって努力義務
  • 評価結果の届出:一定規模以上の建物で義務。届け出るためには算定が必要なので、対象の建物では実質的に算定が必須になる

3. 対象と時期

項目内容決まり方
届出の対象国の資料では、5,000㎡以上の事務所の新築・増改築が例政令で定める
建築士の説明の対象法律の概要では、環境への負荷が少ないものを除く建築物。中間とりまとめでは2,000㎡以上の非住宅建築物が例政令などで定める
第三者認証・表示すべての用途・規模が対象の例任意
施行評価制度・届出・第三者認証は、公布(2026年7月31日)から2年以内政令で定める
届出の経過措置施行日から14日後以降に着工する新築・増改築が対象附則で定める

まず対象になるのは大規模な事務所ですが、建築士の説明・協力は、より広い範囲の建物にかかる見込みです。中小の設計事務所にとっても、他人事ではありません。

4. 国のロードマップ

建築物のライフサイクルカーボン削減に向けたロードマップ。第1ステップは2027年まで、第2ステップは2028年から、第3ステップは2030年代
国のロードマップ。評価の一般化(2028年〜)のあと、削減策の強化へ進む

国は、制度を3つのステップで進めるとしています。

ステップ時期中身
第1ステップ〜2027年LCCO₂評価の実施と、自主的な削減
第2ステップ2028年〜評価の一般化と、削減策の措置
第3ステップ2030年代削減策の強化(制度開始後3年以内を目途に検討を始める)

あわせて、次の動きも示されています。

  • 届出の対象の拡充:制度開始後おおむね5年以内に、用途・規模を広げる想定
  • 原単位の整備:主要な建材について、EPD・CFPによる業界代表データや個社データを2027年度までに整備し、国がデフォルト値を定める
  • 公共建築での先行実施:官庁施設では2027年にLCCO₂算定を実施する予定。UR賃貸住宅では2026年から全建替え事業に広げる

つまり、今は「まず測る」段階で、その先に「減らす」ことが求められていく流れです。

5. 立場別に、今からやること

発注者(建築主)

  • 2028年以降に着工する計画のうち、届出の対象になりそうな建物(大規模な事務所など)を洗い出す
  • 対象外の建物も含めて、一度算定してみる。自社の建物の傾向を知っておくと、削減の判断がしやすくなる
  • 補助金が使えるうちに経験を積む(後述)

設計者

  • 建築主から説明を求められたときに答えられるよう、算定の範囲と進め方を押さえておく
  • 基本設計の段階で、構造形式や主要資材の違いで排出量がどう変わるかを比べられる体制を用意する
  • 算定に必要な資料(図面、数量、仕様)を、プロジェクトの早い段階から整理しておく

施工者・建材メーカー

  • 竣工時の算定に備えて、実際に使った資材の数量と仕様を記録できるようにしておく
  • 建材メーカーは、自社製品のEPD・CFPを用意しておくと、設計段階で選ばれやすくなる

6. 制度が始まる前に、補助金で経験を積む

国は制度の開始に先立って、建築GX・DX推進事業でLCCO₂評価の費用を補助しています。BIMを使わずLCCO₂の評価だけを行う場合で、上限は650万円/PJの定額補助です。

補助を受けた評価結果は国に報告され、制度の検討に使われます。制度が始まる前に、費用をかけずに算定の経験を積める機会と言えます。詳しくは「建築GX・DX推進事業「LCCO₂評価実施型」の使い方」をご覧ください。

7. まとめ

  • 改正建築物省エネ法(2026年7月31日公布)で、建築物のライフサイクルカーボンの評価制度ができた
  • 評価は努力義務。一定規模以上の建物(国の例では5,000㎡以上の事務所)は、着工14日前までの届出が義務
  • 施行は公布から2年以内。届出の対象は、制度開始後おおむね5年以内に広げる想定
  • 今は「まず測る」段階。補助金が使えるうちに一度算定しておくと、制度にも削減にも備えられる

この記事は、国土交通省の公表資料(2026年10月時点)にもとづいています。届出の対象となる用途・規模、施行日、評価の指針は、今後の政令・告示などで確定します。決まり次第、この記事を更新します。

よくある質問

LCCO₂の算定は、すべての建物で義務になりますか?
なりません。建築主による評価の実施は努力義務です。義務になるのは、政令で定める用途・規模の建築物について、評価の結果を国に届け出ることです。国の資料では、5,000㎡以上の事務所の新築・増改築が例として示されています。
いつから始まりますか?
改正法は2026年7月31日に公布され、ライフサイクルカーボンの評価制度、届出、第三者認証は、公布から2年以内に施行されます。国のロードマップでは、2028年から評価の一般化を進める第2ステップに入るとしています。正確な施行日は、今後の政令で決まります。
届出の対象外の建物なら、何もしなくてよいですか?
法律上の届出は不要ですが、建築主には評価に努める義務があり、設計を委託された建築士には、評価に必要な事項を建築主に説明するなどの協力が求められます。また、国は制度開始後おおむね5年以内に、届出の対象を広げることを想定しています。
届出の期限はいつですか?
法律案の発表資料では、建築主は着工の14日前までに、評価の結果などを国土交通大臣に届け出ることとされています。

出典

  1. 改正建築物省エネ法の概要(国土交通省)
  2. 建築物省エネ法の一部を改正する法律案の閣議決定について(令和8年3月27日、国土交通省)
  3. 建築物のライフサイクルカーボンの削減に向けた制度のあり方 中間とりまとめ(令和8年1月28日、国土交通省)
  4. 建築物のライフサイクルカーボンの削減に向けたロードマップ(中間とりまとめ別添1、国土交通省)
  5. 建築物のライフサイクルカーボン評価に関する制度の検討(国土交通省)
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