目次
  1. 1. 用語の関係を一枚で見る
  2. 2. ホールライフカーボンとライフサイクルカーボン
  3. 3. エンボディドカーボンとオペレーショナルカーボン
  4. 4. アップフロントカーボン
  5. 5. 日本の5つの段階とEN 15978のモジュール
  6. 6. まとめ

建物のCO₂を語るときに出てくる、ホールライフカーボン、ライフサイクルカーボン、LCCO₂、エンボディドカーボン、アップフロントカーボン、オペレーショナルカーボン。似た言葉が多く、資料によって使い方も違うため、混乱しやすいところです。

この記事では、それぞれが建物の一生のどの範囲を指すかを、一枚の図で整理します。

要点

  • ホールライフカーボン=ライフサイクルカーボン(LCCO₂):どちらも、資材製造から解体までの建物の一生分の排出を指す
  • エンボディドとオペレーショナルは、その内訳:資材と工事の排出がエンボディド、運用のエネルギー消費による排出がオペレーショナル
  • アップフロントは、エンボディドのうち竣工までの分:設計段階でほぼ決まるので、削減の検討で特に重視される

1. 用語の関係を一枚で見る

ホールライフカーボン、エンボディドカーボン、アップフロントカーボン、オペレーショナルカーボンの範囲を、EN 15978のモジュールに対応づけた図
用語と範囲の関係。A〜Dは欧州規格EN 15978のモジュール記号
用語範囲ひとことで
ホールライフカーボンA1〜C4建物の一生分の排出(海外での呼び方)
ライフサイクルカーボン(LCCO₂)A1〜C4建物の一生分の排出(日本の制度での呼び方)
エンボディドカーボンA1〜A5、B1〜B5、C1〜C4資材と工事にかかわる排出
アップフロントカーボンA1〜A5竣工までに出る排出
オペレーショナルカーボンB6〜B7運用のエネルギー・水による排出

2. ホールライフカーボンとライフサイクルカーボン

結論から言えば、ほぼ同じものを指す、呼び方の違いです。

  • ライフサイクルカーボン(LCCO₂):国の制度や補助金で使われる言葉です。国の中間とりまとめでは、建物の資材製造・施工から解体に至るまでのライフサイクル全体を通じたCO₂等の排出量と定めています
  • ホールライフカーボン(Whole Life Carbon、WLC):欧州を中心に海外で広く使われる言葉です。国内でも、国の算定ツールJ-CATは、提供元の紹介資料で「建築物WLC算定ツール」と呼ばれています

同じツールが、国土交通省の発表では「ライフサイクルカーボン算定ツール」、提供元の資料では「WLC(ホールライフカーボン)算定ツール」と紹介されていることからも、両者が同じ範囲を指していることが分かります。

実務では、国内の制度・補助金の書類ではLCCO₂、海外の基準や外資系の発注者とのやりとりではホールライフカーボンと使い分けておけば、まず困りません。

3. エンボディドカーボンとオペレーショナルカーボン

建物の一生分の排出は、性質の違う2つに分けて考えます。

エンボディドカーボン

資材の製造、現場までの輸送と工事、修繕・更新で取り替える資材、解体と廃棄物処理にかかわる排出です。資材と工事に「埋め込まれた」排出という意味で、こう呼ばれます。

減らす手段は、低炭素な資材の選択、使う量を減らす設計、躯体の再利用、長く使える仕様の採用などです。

オペレーショナルカーボン

冷暖房、照明、給湯など、建物を使うときのエネルギー消費による排出です。これまでの省エネ基準や省エネ計算で扱ってきたのは、主にこの部分です。

減らす手段は、断熱、高効率な設備、再生可能エネルギーの導入などです。

なぜ今、エンボディドカーボンが注目されるのか

省エネが進んでオペレーショナルカーボンが小さくなるほど、建物全体に占めるエンボディドカーボンの割合は相対的に大きくなります。省エネだけでは減らしきれない部分として、資材と工事の排出に目が向くようになりました。

4. アップフロントカーボン

エンボディドカーボンのうち、資材製造と施工(A1〜A5)、つまり竣工までに出てしまう排出をアップフロントカーボンと呼びます。

アップフロントカーボンには、2つの特徴があります。

  • 竣工した時点で確定する:あとから運用で減らすことができない
  • 設計段階でほぼ決まる:構造形式、躯体の量、主要な資材の選び方で大きく変わる

このため、削減を考えるなら基本設計の段階で一度算定し、選択肢を比べておくのが効果的です。

5. 日本の5つの段階とEN 15978のモジュール

海外の資料や算定ツールでは、EN 15978(欧州の建物の環境性能評価の規格)のモジュール記号がよく使われます。日本の5つの段階とは、おおむね次のように対応します。

日本の段階EN 15978のモジュール中身
資材製造A1〜A3原料の調達、工場までの輸送、製造
施工A4〜A5現場までの輸送、施工
使用(資材関連)B1〜B5使用、維持、修繕、交換、改修
使用(光熱水関連)B6〜B7運用のエネルギー、水
解体C1〜C4解体、輸送、廃棄物処理、処分
(範囲外)D再利用・リサイクルによる効果

モジュールDは、解体後の資材を再利用・リサイクルすることで将来の排出を減らせる効果です。建物の範囲の外で起きることなので、合計には含めず、別に示すのが一般的です。国の中間とりまとめでも、算定は資材製造から解体までを基本としています。

6. まとめ

  • ホールライフカーボンとライフサイクルカーボン(LCCO₂)は、どちらも建物の一生分の排出を指す、呼び方の違い
  • その内訳が、資材と工事のエンボディドカーボンと、運用のオペレーショナルカーボン
  • エンボディドカーボンのうち竣工までの分がアップフロントカーボン。設計段階で決まるので、早めの算定が効く

LCCO₂の算定の範囲や制度の動きは「LCCO₂とは:建築物のライフサイクルカーボンを実務者向けに整理」で詳しく解説しています。


この記事は、国土交通省および住宅・建築SDGs推進センターの公表資料(2026年10月時点)にもとづいています。算定の範囲や方法は、今後国が定める評価の指針で確定します。

よくある質問

ホールライフカーボンとライフサイクルカーボンは、どちらの言葉を使えばよいですか?
指す範囲はほぼ同じなので、相手に合わせて使い分ければ十分です。国の制度や補助金の書類では「ライフサイクルカーボン(LCCO₂)」、海外の基準や外資系の発注者とのやりとりでは「ホールライフカーボン(Whole Life Carbon)」が使われることが多くあります。
エンボディドカーボンだけを算定すれば足りますか?
目的によります。国の制度や建築GX・DX推進事業で求められるのは、使用段階の光熱水(オペレーショナルカーボン)も含めた建物全体の算定です。一方で、設計段階で資材の選び方を比べるときなどは、エンボディドカーボンやアップフロントカーボンだけを取り出して見ることもあります。
モジュールDとは何ですか?
解体後の資材の再利用やリサイクルによって、将来の排出を減らせる効果のことです。建物の範囲の外で起きる効果なので、合計には含めず、別に示すのが一般的です。

出典

  1. 建築物のライフサイクルカーボンの削減に向けた制度のあり方 中間とりまとめ(令和8年1月28日、国土交通省)
  2. 建築物のライフサイクルカーボン算定ツール正式版を公開しました(令和6年10月31日、国土交通省)
  3. J-CAT(建築物WLC算定ツール)紹介資料(住宅・建築SDGs推進センター)
  4. 連続講座「ホールライフカーボン評価の基礎知識」第1回(2023年7月10日、住宅・建築SDGs推進センター)
  5. EN 15978:2011 Sustainability of construction works — Assessment of environmental performance of buildings
  • ホールライフカーボン
  • ライフサイクルカーボン
  • LCCO₂
  • エンボディドカーボン
  • EN 15978

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